検査の結果、山本聡子さんは舌粘膜に異常がないことがわかり、神経障害性疼痛が疑われました。舌神経の損傷、三叉神経痛、糖尿病、ヘルペスウイルスの感染は見当たりません。また、舌の痛みがかなり苦痛で日常生活にも悪影響が生じていることから、「身体症状症、疼痛が主症状のもの」とも判断できることがわかりました。
こうして、どのようなタイプの舌痛症なのかが判明すると、次はいよいよ治療に入っていきます。しかしその前に、舌痛症とはそもそもどんな特徴を持つ病気なのかをおさらいしておきましょう。ここで述べる舌痛症とは舌粘膜に異常が見当たらない、主に神経障害性疼痛と考えられるタイプの舌痛症です。
- 舌粘膜、その他の口腔粘膜に外見上の異常が見当たらない
- 慢性的な舌の痛みが続く
- 痺れた感じやヒリヒリ、ピリピリ、ザラザラ、チリチリなどの感覚をおぼえる場合がある
- 口の中が燃えるような感覚をおぼえることがある
- 舌の動きや形には異常が見られない
- 舌の症状は舌縁や舌尖に生じやすいが、舌背の中央部や口蓋粘膜に生じることもある
- 症状の消失と再発を繰り返している
- 症状が強くなったり、弱くなったりする
- 食事中に痛みが強くなることはなく、むしろ痛みが軽減したり消失したりする場合が多い
- 午前中は痛みが軽く、夕方から夜にかけて痛みが強くなることが多い
- 入浴中や就寝前によく痛む
- ストレスがかかると痛みが強くなる
- 仕事や家事、勉強などに集中しているときは痛くない
- 友人との集まりや旅行などの間は痛みを感じない
- 血液検査では異常が見られない
- 虫歯など歯のトラブル時や治療後に症状が発現しやすい
- 頭痛や生理痛時に使う一般的な鎮痛剤が効かない
3番目の「痺れた感じやヒリヒリ、ピリピリ、ザラザラ、チリチリなどの感覚」は神経障害性疼痛の特徴を如実に表すものです。また、4番目の「口の中が燃えるような熱感をおぼえる」症状は口腔灼熱症候群という病名で呼ばれることもありますが、特徴が舌痛症と共通する病気と考えられます。一方、舌痛症を抱える患者さんについては次のようなことがいえます。