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鼻口蓋管のう胞

上顎骨の前方部、上顎前歯の裏側の骨の中に口腔と鼻腔をつなぐ管があります。これが鼻口蓋管、別名切歯管です。この管の中には神経(鼻口蓋神経)や血管(鼻口蓋動静脈)が通り、通常は直径1~2mmと細く目立たないものの、写真のように太く丸くなる場合があります。この症例は鼻口蓋管嚢胞が管内で生じ、膨らんだものです。

鼻口蓋管嚢胞が生じる原因を理解するためには、胎生期に上顎骨が発生するまでの過程を知ることが必要です。上顎骨は左右に分かれて成長を始め、やがて左右が合体しますが、この時に左右の骨と骨の間にある粘膜が消失して骨同士が縫合します。この時、一部の粘膜上皮が鼻口蓋管の内部に残存し、何らかの刺激により風船のように膨らむと管周囲の骨を内部から押し拡げて鼻口蓋管のう胞(切歯管のう胞)となります。

鼻口蓋管のう胞が小さい場合は症状を自覚することはありませんが、大きくなると口蓋や鼻の付け根が膨らんでいるのが自覚でき、痛みや違和感が生じることがあります。また、周囲の歯の虫歯が鼻口蓋管のう胞に感染すると痛みや痒みが生じることもあります。

鼻口蓋管のう胞があるとしても、小さくて無症状であれば特に治療の必要はありませんが、大きくなって症状が出てくると摘出術が必要となります。手術は口蓋側か唇側の粘膜を切開してのう胞を摘出し、切開創を縫合します。手術の影響で鼻口蓋神経が切断されるため、口蓋前方部に知覚麻痺が生じる可能性があります。

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