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舌痛症の治療法2

2.認知行動療法

 心理テストの項でも触れましたが、舌の痛みが続くと「なぜ痛いのだろう」「がんじゃないかしら」「いつまでも治らなかったらどうしよう」などと思い悩むものです。悩みが続くと、時には仕事や家事、勉強にも支障が生じてしまいます。精神的に追い詰められると身体の調子がさらに悪化する場合もあり、まさに悪循環に陥ることになります。したがって、何より大切なことは病気を正しく理解し今の状況を的確に把握して、日常生活への影響を出来るだけ少なくすることです。その主旨に沿った対処法が認知行動療法です。

 認知行動療法とは心理療法の一種で、簡単に言うと病気を正しく理解して受け止め、病気に対する対処法をいろいろと試してみる方法です。試した結果を記録に留めておき、後で振り返ってどの方法がベストであるのかを確かめます。こうした行為により前向きな気持ちで病気に立ち向かったり、時にはやり過ごしたりできるようになります。舌の痛みに対処しているうちに、痛みそのものが消えてしまうこともあるのです。

 病気を正しく理解して受け止めることは、病気に翻弄されている当の患者さんにとって容易ではありません。舌が痛くなれば、「こんなに痛みが続くなんてがんに違いない」「舌が痛いから何もできない」と考えるのも無理はないでしょう。実際に舌がんであるかどうかを確かめるのは患者本人ではなく医師ですから、いつまでも気に病まず医療機関を受診する方が賢明です。健康な時であれば誰にでもある常識的な判断力が鈍くなりがちですが、「舌が痛いので何もできない」わけではないはずです。痛みがあっても、会社員であれば毎日職場に通って働くのが現実でしょう。したがって、「何もできない」ではなく「これならできる」と考えるべきです。物事を正しく捉えたり、判断したりできないことを専門用語で「認知の歪み」といいます。認知行動療法では「認知再構成」という方法を用いてこの歪みを修正します。

 舌痛症の患者さんにお話を聞くと、一日中痛みが続くと訴える患者さんが少なくありません。しかし、毎日の痛みを日記のように記録してもらうと、実際には一日中痛みが続くケースは少ないのです。このように毎日記録することにより認知再構成が促され、「午前中は痛くない」「カラオケに行った日はいつも痛くなかった」「テストが近づくにつれて痛みが強くなっていった」など、何らかのパターンが見つかる場合があります。痛みのパターンに応じた対処法が見えてくると、次はそれを実行に移して結果を記録します。最後はそれを振り返り、対処法がどの程度有効であったかを検討します。このような試みを繰り返すうちに最も有効な対処法が身につき、やがて「痛みはあるが生活に支障はなくなった」、「痛みをやり過ごしているうちに消えてしまった」という段階に辿り着くことができるのです。

3.コロコロガム法

 舌痛症の患者さんの中には「飴をなめている時は痛くないので、一日中飴をなめています」という方がいます。粘膜に異常がない場合は食事中に痛みを感じない、あるいは痛みが軽減するのが舌痛症の特徴です。食物や飴が舌に触れることにより、痛みが脳に伝わりにくくなることは神経が持つ性質から明らかにされています。

 粘膜や皮膚の感覚を脳に伝える神経線維にはAβ、Aδ、Cの3種類があります。太いAβ線維は触覚を伝え、Aδ線維は中程度の太さで鋭い痛みを伝えます。一方、細いC線維は鈍い痛みや冷温覚を伝えます。Aδ線維やC線維に痛みの刺激が伝わっている状態、すなわち痛みが続いている状態で、Aβ線維が刺激されると痛みが軽減します。これは太いAβ線維の刺激が優先されて脳に伝わるため、より細いAδ線維やC線維の刺激が脳に伝わりにくくなるためです。舌粘膜に飴による触覚の刺激を加えると痛みが和らぐのは、このメカニズムによるものです。子どもが「痛い痛い」と泣きわめいているとき、お母さんが痛む場所をなでてやると痛みが軽くなって泣き止むのもこの理屈で説明できます。エクセレントブレスガム

 ただし、一日中飴をなめるのは考え物です。当然飴は溶けてなくなるため、新しい飴を次々に口に入れる必要がありますし、飴をなめ続けると虫歯ができるというリスクもあります。飴をなめるよりずっと優れた方法があります。それはガムを5分間噛み、丸くなったガムを舌の上でコロコロと転がし続けるという方法です。「コロコロガム法」といい、痛みを和らげる効果は飴と変わらず、飴のように溶けてなくなることはありません。砂糖が入っていないガムを噛めば虫歯のリスクもゼロです。

4.リラクゼーション

 心身の緊張状態が続くと痛みを感じやすくなります。逆に言えば、緊張さえ緩和できれば痛みは軽くなるはずです。身体の緊張を取る方法として「漸進的筋弛緩法」があり、精神的な緊張を取る方法に「自律訓練法」があります。

 漸進的筋弛緩法は緊張している筋肉を緩める方法です。緩めたい筋肉にできる限りの力を入れて数秒間その状態を保つと、力が入って筋肉が緊張していることを感じ取れます。その後、力をふっと抜きます。直前の緊張状態とのギャップから、筋肉の力が抜けてリラックスした状態であることが実感できるでしょう。こうして全身の筋肉を順に緩めていきます。

 自律訓練法は自律神経のバランスを回復させることにより、精神的な緊張を取る方法です。まずはゆったりとした姿勢で深呼吸し、できるだけリラックスしましょう。次に以下の7つの公式を順番に感じていきます。

第1公式(四肢の重感) : 手足が重い
第2公式(四肢の温感) : 手足が温かい
第3公式(心臓調整)  : 心臓が静かに脈打っている
第4公式(呼吸調整)  : 楽に呼吸している
第5公式(腹部温感)  : お腹が温かい
第6公式(額涼感)   : 額が涼しく心地よい

最後に伸びをし、首や肩を回して気分をすっきりさせます。

5.呼吸法

 腹式呼吸を行うと副交感神経が優位になり、交感神経の緊張を緩和してゆったりとリラックスした気分を味わうことができます。

・口を閉じてゆっくりと鼻から息を吸い込みます。このときお腹を膨らませて空気を最大限に肺へ取り込むようにします。
・息を吸い込んだらしばらく呼吸を止めます。
・その後、ゆっくりと鼻から息を吐き出します。その際はお腹をへこませて空気を肺から追い出すようにします。

しばらくこの呼吸を続けているとさまざまな雑念が生じてくるはずですが、そのたびに呼吸そのものに意識を集中させましょう。やがて雑念が消え、呼吸だけに集中できるようになります。

交感神経の緊張を解く呼吸法を紹介しましたが、舌痛症の場合は副交感神経への対応が必要な場合もあります。一仕事終えてホッとすると舌が痛くなってくる、夜家に帰ってリラックスしている時間帯が一番痛いというように、舌痛症は副交感神経優位の時間帯に痛みが出現する傾向があります。そんなときは胸式呼吸で胸を膨らませ、ゆっくりと呼吸してみましょう。

ここまでは、舌粘膜に異常が見当たらない典型的な舌痛症に対する治療法を紹介してきましたが、たとえば糖尿病により引き起こされる神経障害性疼痛に対しては、当然痛みの治療だけでなく糖尿病自体に対しての治療が必要となります。

 次は、舌粘膜に異常がある場合の舌痛症に対する治療法を紹介していきます。このタイプには舌がんも含まれますが、舌がんに対する治療法は手術による切除が原則です。放射線治療、抗がん剤を用いた化学療法、免疫療法を組み合わせる場合もあります。また、がんが進行して手術ができない場合や全身状態が悪く手術に耐えられない場合にも放射線治療や化学療法、免疫療法が行われます。歯のトラブルに対しては歯科が対応します

6.ドライマウスの治療

 唾液の分泌量を増やす方法として漢方薬やムスカリン作動薬の内服、唾液腺マッサージ、舌筋や口腔周囲筋のトレーニング、ガムを噛む、コロコロガム法、水分摂取があります。口腔粘膜の潤いを保つ方法には保湿ジェルの塗布や保湿スプレーの噴霧、マウスリンスを用いたうがいやモイスチャープレートの使用があります。口呼吸に対しては口腔周囲筋のトレーニング、口唇テーピング、マスクの使用、コロコロガム法、鼻疾患の治療があります。

7.口腔カンジダ症の治療

フロリ-ドゲルオラビ錠

 カンジダ菌を駆除するため、口腔粘膜に抗真菌剤を塗布します。口内炎用のうがい薬の使用や漢方薬の内服も症状を改善させる効果があります。口腔カンジダ症はドライマウスに引き続いて発生するケースが多いため、ドライマウスも治療します。

8.歯ぎしり、食いしばりの治療

 夜間の歯ぎしりを確実に治す方法はありませんが、「ナイトガード」という歯ぎしり用のマウスピースのような器具を装着して就寝すると、歯ぎしりから歯や舌粘膜を守ることができます。寝る前に「歯ぎしりしない」と何度も念じて眠りにつくと歯ぎしりしにくいという説もあります。ナイトガード

 日中は食いしばらないことを意識するだけで舌の痛みが軽減する場合があります。上下の歯が接触する「歯列接触癖」は間違った状態で、上下の歯はいつでも2~3mm離しているのが正常な状態です。一か所でも上下の歯が当たっていると食いしばりへとつながっていくため、日中は上下の歯を接触させないよう心がけます。たとえば洗面所や台所などに「上下の歯を離す」と書いた付箋を貼っておき、見るたびに口の中を確認すると癖を改善しやすくなります。コロコロガム法も効果が期待できます。

9.口腔扁平苔癬の治療

 口腔扁平苔癬は難治性で「このようにすれば治る」という定まった治療法はありません。ステロイド軟膏の塗布、口内炎用のうがい薬でのうがい、漢方薬、ビタミンA、胃腸薬などの内服といった治療法があり、これらの治療法が試されています。

10.扁平苔癬様病変の治療

 この病気の主な原因は薬や歯科用金属に対するアレルギー反応です。原因となる薬の使用を避ける他、歯に使用した金属を別の材料に交換することが治療法となります。

11.紅板症の治療

 この病気はがん化しやすいため早期の切除が望まれます。

12.亜鉛欠乏症

ノベルジン

 亜鉛は体内で作られず食事から摂取する必要があります。カキ(牡蠣)、レバー、蕎麦、牛乳、煮干しの他、野菜にも含まれているので、日頃からこれらの食品を意識して摂りましょう。加熱処理の過程で亜鉛が失われている加工食品は避けた方がよいでしょう。薬で亜鉛を補充する方法にはノベルジン、プロマック(薬品名:ポラグレジング)、酸化亜鉛の内服があります。

13.鉄欠乏性貧血

 食事で鉄分を補うのがベストですが、腸管から鉄を体内に吸収するためには同時にタンパク質とビタミンを補う必要があります。鉄欠乏性貧血に対しては鉄剤を内服しますが、痔や大腸がんなど持続的な出血により鉄分が失われている場合もあるため、原因を調べる必要があります。

14.ハンター舌炎

 ビタミンB12の注射や内服を行います。

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