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チーズでむし歯予防!?

見落としていた事実

こうして期待と不安が入り混じった時間を過ごす間に、とんでもない事実が明らかになりました。「うまくいった」と思っていた予備実験の結果に大きな問題があることが判明したのです。予備実験は川畑さんにガムやチーズを噛んでもらってCAT21ファストの結果を見るものでしたが、この結果は前述の通り、ガムを噛んだ後は酸産生能力が高いままだったのに対して、チーズを噛んだ後は低くなっていました。問題は何も噛まずに出してもらった唾液の結果で、実はこの唾液が塚本さんのものだったのです。つまり、誤った唾液を使って結果を出していたのでした。

頼りにしていたデータは川畑さんと塚本さんの2人のデータが混じったもの。クライマックスに近付いているこの時点でそれが判明し、大打撃です。朗報が入るかどうか全くわからない状況となり、これまでの準備が何も役立つことなく終わってしまうかもしれない事態となりました。これではテレビで放送される日は永遠に来ないでしょう。このときは相当落ち込みました。

しかし後で冷静に考えてみれば、そんなに悪い事態ではなかったのです。ガムを噛んだ際とチーズを噛んだ際の川畑さんの唾液でよい結果が得られていたのは事実で、ガムよりもチーズの方が明らかに高い酸産生抑制効果、即ち抗う蝕効果が確認できていたからです。何も噛まない状態の川畑さんの唾液を採って調べたとしたら、おそらく酸産生能力が高いという結果になったでしょう。ただチーズの培養結果を待つ数分間に、そこまでは思い至らなかったのでした。