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第31回日本歯科東洋医学会学術大会 発表内容

第31回日本歯科東洋医学会学術大会において学会発表しましたTAO問診票

2013年11月16(土)、17(日)に大阪市の大阪歯科大学で「第31回日本歯科東洋医学会学術大会」が開催されました。17日に院長が発表しました。

TAO問診票を用いた口腔内科疾患の証の分析

○樋口均也

関西支部 医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック(大阪府茨木市)

緒言

舌痛症、ドライマウス、味覚障害など口腔内科疾患はさまざまな原因が複合的に関与して発症すると考えられ、そのため個々の問題を診るだけでなく、患者の心身両面を観る全人的医療が必要な疾患群であると言える。従って、個々の症状や病因を分析的に捉える西洋医学的なアプローチより、患者を全体的に捉える漢方医学的なアプローチの方が有力である症例が多い。

漢方医学の中でも中医学は舌診や脈診をもとに証を診断し、それに基づいて方剤を決定する方法を取る。西洋医学の教育を受けた医療人にとっては、このような診査、診断法は日本漢方よりも取り入れやすいと考える。しかし、舌診や脈診を行うには専門的なトレーニングと知識、経験を要する。演者は中医学的な問診票を用い、診査、診断を簡素化している。この問診票を用いて、各種口腔内科疾患がどのような中医学的診断、即ち「証」を示すかを調査した。

対象と方法

2008年から2013年までに医療法人慶生会ひぐち歯科クリニックを受診した口腔内科疾患の患者448名を調査対象とした。主訴に関する主要な疾患を一つ選択し、患者を舌痛症、ドライマウス、口内炎、口腔顔面痛、異常感症、味覚障害、口臭症、顎関節症、その他の9グループに分類した。

TAO東洋医学研究会作成の問診票(以下TAO問診票)を記入してもらい、No.1〜142までの問診項目の中で気虚や肝・胆などの証を項目ごとに点数化し、その点数の平均点を算出した。なお、各項目に記入された◎、○をそれぞれ2、1点とし、記入のないものを0点とした。

結果

各種口腔内科疾患の中では舌痛症が131例と最も多く、それに次いでドライマウス101例、口内炎56例であった。TAO問診票の記入内容を集計し、平均点数が最も高い項目をその症例の証とした。気血水・八綱弁証では津液不足が198例と最も多く、それに次いで陽虚94例、気虚63例であった。臓腑弁証では心・小腸が210例と最も多く、それに次いで腎・膀胱が73例であった。大半の疾患グループで津液不足と心・小腸の証が最も多くみられた。

考察

TAO問診票を用いた各種口腔内科疾患の証は津液不足が多いことからは、口腔粘膜の乾燥が口腔内科疾患と関連することが示唆された。また、心・小腸が多いことから、血行の異常や中枢神経系の問題との関連も示唆された。問診票を用いた証の決定は、漢方治療の初心者であっても容易に行うことができる利便性の高い方法と考えられた。今後、正常者や他の疾患に対するTAO問診票の調査結果と今回の結果を比較・検討をすることが必要と考えられた。

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