口腔粘膜の病変から発見できる全身の病気

11口腔粘膜の色の変化や形の変化から、内臓や皮膚にも症状が現れる病気が見つかることがあります。そのような例が列挙されている論文があり、その内容を紹介します。

口腔粘膜の色の変化

白色

• 白色角化　　　　　　　　扁平苔癬
• 発赤と白色の粘膜疹　　　梅毒性粘膜疹（Ⅱ期）
• 発赤を伴う白色の偽膜　　急性偽膜性カンジダ症（エイズ、悪性リンパ腫、内分泌疾患などの免疫不全）
• 頬粘膜の白色丘疹集簇　　麻疹のコプリック斑
• 舌小帯の白色硬化　　　　強皮症
• 口腔毛様白板症　　　　　エイズ、EBウイルス感染症

紫色

• 紫斑　　　　　　　　　　全身性血管炎（重症IgA血管炎など）
• 紫斑、異常出血　　　　　血友病、白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、血小板減少性紫斑病、播種性血管内凝固
• 紫斑、血庖　　　　　　　全身性アミロイドーシス、多発性骨髄腫

赤色

• 丘疹状毛細血管拡張　　　遺伝性出血性毛細血管拡張症（Osler病）

褐色

• びまん性褐色性色素沈着　アジソン病、ヘモクロマトーシス

細かい多発性褐色斑　　　ポイツ・ジェガース症候群

水疱

小水疱の多発・集簇　　　ヘルパンギーナ、単純ヘルペス、水痘、手足口病、マイコプラズマ感染症、突発性発疹
• 水疱・びらん・潰瘍　　　水疱性類天疱瘡、ラミニン332型粘膜類天疱瘡
• 水疱・びらん・剥離　　　腫瘍随伴性天疱瘡、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症
• 増殖性膿疱性口内炎　　　潰瘍性大腸炎、クローン病

腫瘤

• 結節・腫瘤　　　　　　　肺癌転移、メルケル細胞癌転移、白血病、梅毒の初期硬結、アミロイドーシス、カポジ肉腫

歯肉浸潤・舌浸潤　　　　白血病、悪性リンパ腫

• 肉芽腫　　　　　　　　　多発血管炎性肉芽腫症（ウェゲナー肉芽腫）、サルコイドーシス
• 血管腫　　　　　　　　　遺伝性出血性毛細血管拡張症（オスラー病）、青色ゴムまり様母斑症候群
• 巨舌　　　　　　　　　　全身性アミロイドーシス、汎発性粘液水腫
• 舌の多発性脂肪腫　　　　アルコール性肝炎、肝硬変、対称性脂肪種症

潰瘍

• アフタ（円形潰瘍）　　　ベーチェット病、スウィート病、炎症性腸疾患

無痛性潰瘍　　　　　　　全身性エリテマトーデス

• 難治性広範囲びらん　　　天疱瘡、類天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、ラミニン332型
• 粘膜類天疱瘡
• 広範囲びらん　　　　　　多型性滲出性紅斑重症例、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症
• 難治性限局性潰瘍　　　　薬剤性口腔潰瘍
• 免疫不全者の難治性潰瘍　口腔カンジダ症、サイトメガロウイルス感染症

出血

異常出血・紫斑　　　　　血友病、白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、血小板減少性紫斑病、播種性血管内凝固
• 丘疹からの異常出血　　　遺伝性出血性毛細血管拡張症（オスラー病）
• 口蓋の点状出血班　　　　風疹のフォルヒハイマー斑、薬疹

出光俊郎、梅本尚可、神部芳則：全身性疾患の存在を示唆する口腔粘膜症状の重要性　―オラドーム（新しい用語）―、日口内誌 28: 1-11; 2022.