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歯列矯正(『きれいな歯になりたい!』4)

「歯列矯正」により、よくかめる正しい歯並びに

かみ合わせは健康をも左右する

「歯列矯正とは何ですか?」と聞かれた場合、ほとんどの人は「歯並びを美しく整えること」と答えることでしょう。しかし、「歯列矯正イコール歯並びの修正」という考え方は間違いではないものの、もっと大切な点を見落としています。歯列矯正とは、咬合時の上下の歯列の接触面積を増やし、咀嚼能力を高めることが第一の目的なのです。歯のかみ合わせが悪いと全身のバランスが悪くなり、神経や血管に影響を及ぼして体調不良を招きます。また、消化効率が悪くなるため、胃腸にかかる負担も大きくなります。従って、歯並びの善し悪しは健康を左右すると言っても過言ではないのです。日頃の体調不良が気になる人は、ぜひ歯のかみ合わせをチェックしましょう。

歯並びを決めるのはアゴの骨と歯

歯並びを決定する要因は「アゴと骨」と「歯」で、歯並びの悪さはこの2つのアンバランスから引き起こされるものです。つまり、土台であるアゴの骨自体の大きさや成長方向、あるいは歯の位置に問題があるということです。歯列矯正は、一般的に歯そのものを動かす治療というイメージが強いようですが、実際には歯だけではなく、上下のアゴの位置を修正する治療も含まれています。アゴの矯正とは、例えば成長期で下アゴが出ている場合にチンキャップを付けて下アゴの成長方向を修正したり、拡大装置を付けて上アゴの幅を広げて成長を助長する治療のことです。

適正な歯の数は24〜28本

人間の永久歯は智歯(親知らず)を含めて32本ありますが、これら全てが整然とアゴの骨の中に収まっている人は、ごく少数です。これは、人間の進化の過程から生じたアンバランスといえます。現代人の場合、アゴの骨が比較的大きくて歯が小さい人は28本、またアゴの骨が比較的小さく歯が大きい人は24本が適当であると考えられています。

欧米では歯列矯正が常識

並びに対する考え方には日本と欧米で大きな差があり、例えばアメリカでは親が子供に歯列矯正治療を受けさせることは、いわば日本における“義務教育”のようなものであるといえます。アメリカでは整った歯並びと美しい口元は社会人として常識であり、歯並びを良くすることは、国際人として欠かせない条件であると見なされています。従って、日本の社会においても歯列矯正に対する考え方は、今後大きく変化すると思われます。

「エステティックライン」と「スマイルライン」をより美しく

エステティックラインとは鼻と下アゴを結んだ線のことで、人間の顔を横から見た時にこのラインの内側、あるいは線上に上下の唇があるのが美しい顔形とされています。また、スマイルラインとは、笑顔を作った時にできる上アゴ前歯の下縁のラインのことをいい、上唇に沿ってきれいにカーブを描いている状態が理想的です。一般的に、口元の美しさをはかる物差しとされるのがこの2つのラインです。歯列矯正でこれらのラインを整えることはもちろん可能ですが、表情を磨いて生き生きとした人生を作るのは医師ではなく、あくまでも患者様ご自身です。

月1回の通院でOK

では、実際の治療について説明しましょう。歯の移動は、「ブラケット」というセラミック製(あるいは金属製)の小さな矯正装置を1本1本の歯に特殊な接着剤で付け、そこにワイヤーを通して300グラム以下の弱い力を加えます。するとブラケットとワイヤーによって力のかかった側の骨が吸収されて、その反対側に新しい骨が作られる、いわゆる骨の改造現象が起こります。その結果、歯が少しずつ動くことによって正しい位置に収まっていくのです。また、ほとんどの患者様は痛みについて不安を抱くようですが、食事の際の鈍痛は約1週間で消失し、ブラケットの装着感自体も1〜2週間で慣れてくるものです。

歯列矯正の期間は2〜3年間で、ブラケットを付けてからは1ヶ月に1度の通院治療が必要です。

無駄な歯は抜きましょう

歯列矯正治療を始める前に、本数が多すぎてほとんど機能していない余分な歯を抜いておきます。これは、アゴの大きさに対して適正な歯数に変更しておくことが必要となるからです。歯を抜くことに対して抵抗を感じる患者様が多いのですが、抜歯によって歯の数を減らした上で矯正治療を行なうことにより、治療後の歯の接触面積は確実に増えてかみ合わせが改善されるのです。では、どの歯を抜くのが妥当でしょうか? 一般的には親知らずの他に、歯列全体のバランスに影響のない第一小臼歯を上下左右各1本ずつの合計4本が目安です。ところで、飛び出している八重歯(犬歯)の抜歯を希望される人が多くいますが、犬歯は他の歯と比べて寿命が一番長く、下アゴを左右に滑らせるためのガイドになるのです。従って、犬歯は抜かない方が賢明です。

歯列矯正にベストの時期とは?

初診は、小学校1〜2年頃の6歳臼歯萌出後まもなく、上下の前歯が生え始めた時期が理想的です。上下のアゴの位置関係のずれや、アゴの骨と永久歯の大きさのアンバランスなどを総合的に判断し、「アゴの矯正」が必要な場合は開始時期を検討します。しかし「アゴの矯正」が不要な場合は、どんなに歯のデコボコがひどくても治療は行いません。そして、中学生になり永久歯が生え揃ってアゴの大きさが決まってから、全体的な「歯の移動」をスタートさせます。ところで、治療の時期となる小学校と中学校入学時は子供自身がまだ歯並びに対する関心が薄く、自発的に治療を希望することはほとんどありません。そのため、親御さんには正しい知識と、それぞれのご家庭の事情に応じた的確な治療計画を持って頂くことをお勧めします。

成人の矯正治療は全く見えない「リンガルブラケット」が主流

成長期の2度の節目を逃したからといって、歯列矯正ができなくなるわけではありません。社会人になって初めて、自分の歯並びの悪さが気になってきたという人もたくさんいます。成人の場合は、アゴの大きさが決まっているため治療の自由度は狭くなりますが、極端にアゴの骨がずれていない限りはきれいな歯並びを作ることが可能です。ところで、仕事を持つ女性の一番の悩みが、歯に付けるブラケットが目立つということです。そこで、歯の裏側に付ける「リンガルブラケット」が開発され、成人の患者様に好評です。リンガルブラケットは、通常のブラケットより治療に手間がかかるため費用がやや割高となり、また歯が磨きにくいため子供には不 向きですが、矯正効果は全く変わりません。

スタートとゴールは患者様が決定

また、成人の矯正治療におけるもう1つの悩みが治療期間です。機能的に問題のない範囲で期間を短縮できるケースもありますが、たくさんの歯をアゴの骨の中で一度に動かすという治療ですから、患者様ご自身にもぜひ頑張って通院して頂きたいところです。そして、治療後しばらくの間は就寝時に取りはずし式の保定装置(リテーナー)を入れて頂くことにより、保定を行ないます。この保定期間については、歯を動かした期間と同程度の長さが目安となります。「えっ、まだ装置が必要なの?」と驚かれるかもしれませんが、歯列矯正後の歯は元に戻ろうとする力が働くため、せっかくの治療を無駄にしないためにも一定期間はリテーナーを入れて、歯の位置を固定することがどうしても必要なのです。成人の矯正治療は、できるだけ早いスタートをお勧めします。また、事情に応じて治療期間の短縮も可能なので、カウンセリング時に希望をはっきりと伝えましょう。

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