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歯冠部切除術について

2019年3月10日

相談: (63歳 男性)

智歯抜歯についてどうするべきか悩んでおります。場所は右下になります。これまでの経過ですが平成29年にかかりつけの歯科医院の先生に智歯を抜いたほうがいいと言われ紹介状を書いてもらい平成29年6月に口腔外科のある病院で診察を受けました。パノラマ写真を撮ったところ歯根のあたりに神経があり麻痺が残る可能性があることと全身麻酔で抜歯したほうがよいと言われたため、どうするか迷いましたので、かかりつけの先生に相談して様子を見ることになりました。

平成30年10月の検診時にやはり歯周ポケットが深い等状態が良くないということだったので再度市民病院で今度はCTをとってもらいました。神経が近くにあるので難しい抜歯になると言われました。神経の損傷で麻痺が残ることが気になったので歯根を残しておくことができないかと聞きましたら基本的にはしないと言われました。

インターネットで検索していましたら、3月8日に貴医院のホームページにたどり着き、相談内容の中で歯冠部切除術があるのを知りました。「歯冠部切除術」という名称もこの時初めて知りました。高齢であるためこの方法が良いとは思うのですが、逆になにかのリスクがあるのでしょうか。教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

追伸

智歯は垂直に生えておりまして上面が見えている程度でほとんど埋まっている状態です。水平の状態より抜歯は難しいと言われました。その前の第二大臼歯の側面が智歯のせいと思われる虫歯になっている状態で治療が必要な状態です。

回答:口腔内科 樋口均也

下顎骨の中にある下顎管という管には神経や血管が通っていますが、通常は下顎の歯の下の方にあって歯とは離れています。ただし、例外的に智歯の部分では智歯と下顎管が接近しているケースがよくみられ、中には智歯の根尖が下顎管を抱きかかえていたり、根尖が湾曲して下顎管の下に回り込んでいる場合もあります。このような場合に智歯を抜歯すると下顎管内部の下歯槽神経が損傷し、麻痺が生じる可能性があります。

今までの画像検査から、智歯根尖が下顎管と交錯していることによる神経の損傷を懸念されているのでしょう。次善策である歯冠切除術は歯冠を削り取って歯根を残す方法ですが、この方法であれば神経が損傷する恐れはありません。

歯冠切除術には幾つかの留意事項があります。残った歯根は骨の中に埋まって治癒しますが、中には萌出してくることもあります。その場合は根尖が下顎管から離れて容易に抜歯できます。また、残った歯根部分に感染が生じて歯髄炎になると歯の神経(歯髄)を抜く、あるいは歯根自体を抜く必要があります。

2019年3月13日

相談2: (63歳 男性)

この度は早速ご回答いただきましてありがとうございます。すみませんけれど追加で以下の質問がございます。

  1. 診察を受けた病院での説明では、抜歯を試みてどうしても一部取れない部分(歯根だと思います)が生じた場合には残したままにすると言われました。また、残しておいても問題ないと言われました。このケースと上記歯冠切除術で歯根を残すこととは同じ意味になるのでしょうか。
  2. 歯根を残した場合に歯髄炎になるリスクがあるということでしょうかまた、歯髄炎になる確率は大きいのでしょうか。
  3. 歯冠切除術は、よく行われている方法でしょうか。神経を損傷し、麻痺が残るのも避けたいので、ご回答いただきました内容から判断しますと歯冠切除術の方が良いように思いますがどちらを選択すればよいのかご意見をお聞かせ願えますでしょうか。

回答:口腔内科 樋口均也

  1. 容易に抜歯できる場合は、神経損傷の可能性は低いでしょう。逆に抜歯時に抜きにくい場合は歯冠切除術に切り替えることになります。通常は歯根を残しても問題はありません。
  2. 歯髄炎になる場合がありますが、その頻度はかなり低いと報告されています。
  3. 抜歯の際に容易に抜けるかどうか、手応えをみながら判断することになります。

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