相談: (34歳 男性)
お世話になります。1年前の夏に左上6番のむし歯治療をした後から同部位の慢性的な痛みに悩んでいます。半年くらい前からは関連するのか、会話時に左舌が左上6番に擦れる感じもあります。
むし歯治療時に露髄したため、覆髄して仮歯で様子を見ていました。痛みが続くため今年1月にもう一度レントゲンをとってもらいましたが、問題ないとのことでした。今年4月に金歯を被せた後、噛み合わせの違和感が強くなり、研磨などしてもらいましたが改善しません。
不思議なことに食事中は落ち着いており、例えばガムを噛みながら話すと歯の痛みや舌の違和感はあまり気になりません。非歯原性疼痛なのでしょうか?
回答:口腔内科 樋口均也
むし歯治療の際に露髄したということなので、むし歯が歯の神経にまで達していた可能性が高いと思われます。歯の神経にむし歯菌が感染すると歯髄炎が生じ痛みます。その炎症が今も続いているのであれば、慢性的な痛みが持続しているのも当然だと言えます。
いったん歯髄炎が生じても、侵入してきた細菌の数が少なければ、生体が持つ抵抗力で細菌が死滅する場合もあります。その場合は歯髄炎が治まり痛みがなくなります。現在、歯髄炎が持続しているのか、はたまた歯髄炎が消失したのか、文面の情報からは判断することができません。食事中やガムを噛んでいるときに痛まないことを考えると、歯髄炎が治っている可能性も高いと思います。
歯髄炎が治っているとすると、この痛みは非歯原性歯痛ということになります。非歯原性歯痛の原因はいくつもあります。もっとも多いのは歯ぎしりや食いしばりから来る筋・筋膜痛です。この場合は歯の近くにある咬筋や側頭筋が痛んでいることになります。
露髄した際に神経が傷つき神経障害性疼痛が生じている可能性も考えられます。副鼻腔炎や虚血性心疾患、脳腫瘍、 脳梗塞、偏頭痛、群発頭痛で痛んでいる場合もあります。ストレスなどの心理社会的要因で痛む疼痛性障害もあります。いくら調べても原因がわからない場合には特発性疼痛といいます。