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第6回 日本口臭学会 発表内容 梅崎

学会・研究会 2015年07月24日

第6回 日本口臭学会において研究発表を行いました

2015年7月4日・5日の2日間、第6回 日本口臭学会が新潟で開催されたなか、4日午後に口頭発表を行いました。

口臭に対する不安の改善が心理テストを用いて確認できた1例

  • 医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック1)、
  • 1) 医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック,2) 医療法人ほんだ歯科,3) 鶴見大学歯学部口腔微生物学講座
  •  
  • ○梅崎さおり1),樋口均也1),本田俊一2),前田伸子3)

【緒言】

口臭治療に際しては患者自身が訴えている感覚や心理的要因に配慮することが重要である。そのため、口臭検査を実施するだけ ではなく、客観的な方法で口臭や口臭に関連する問題について正しく認知できるようにする必要がある。我々は患者と医療者の共同作業でこのような問題に取り 組み、口臭に対する不安の解消へと繋がるようにしている。不安が解消されているかどうかをみるために心理テストとしてSTAI(状 態・特性不安検査)を全3回の口臭治療のたびに記入してもらっている。患者自身がより客観的に自己の心理状態を認識できるようにしている。口臭症、なかで も生理的口臭症に対するほんだ式口臭治療の有効性については本学会で繰り返し報告されている。ただし、実際の症例で口臭に対する不安を分析し、治療後の改 善状態を詳しく検討した報告はほとんど見当たらない。本発表では口臭症患者が抱く不安に着目し、治療により不安が軽快したことを心理テストやvisual analogue scale(VAS)を用いて確認することができた1症例を紹介する。

【症例】

39性 女性 夫、長女、長男と4人家族

現病歴:3年前に長女に口臭を指摘されて以来、口臭が気になるよ

うになった。具体的には、臭気を自覚することはなかったが、臭っているような感覚があり、口腔内が気持ち悪いと感じるということであった。長女に口臭を指摘されてからは、以前は気にならなかった他人の仕草が気になり、自己の口臭と結びつけて考えるようになった。

既往歴:逆流性食道炎、花粉症

検査及び治療内容:全3回の治療のたびに各種口臭関連検査を実施した。事前に記載した各種心理テスト、VAS、生活調査票を当日に持参させた。検査結果に基づいて、生活指導、飲食生活指導、心理的サポートといった包括的な治療を行った。

治療経過:状態不安(STAI-1)は1回目46点、2回目45点、3回目36点と軽減し、特性不安(STAI-2)も1回目58点、2回目52 点、3回 目40点と軽減した。自覚的な口臭強度(VAS)も1回目18.4 、2回目10.3 、3回目5.6 と改善が見られた。官能検査は口腔内ガス、呼気ガスともに1回目は(++)であったが、3回目では(-)に改善された。オーラルクロマ、BBチェッカーと もに数値が減少した。最大の認知のゆがみである自己と他人の仕草についても、患者本人がそれに気づいて誤った認知が修正された。それにより、不安が軽減 し、日々の生活でも活力が湧いてきて笑顔も増えてきた。初診時には対話時に自身の口元を隠す仕草をし、ボソボソと口をあまり開けないように話していたが、 治療を重ねる毎に仕草がなくなりはっきりと話すようになっていた。治療後は口臭と口臭不安が改善され、口腔内環境の改善が見られた。その後、3ヶ月毎に定 期検診に通い、現在も良好な状態を維持している。

【考察】

家族からの指摘により口臭への不安が高まり周囲の人々の仕草も気になっていた症例である。口臭外来を受診することにより、 口臭への不安も払拭されていったと考えられる。初回受診時は緊張している様子が伺えたが、2回目以降はリラックスした様子が見られ、自宅でのエピソードに ついても話すようになった。治療前は口臭への不安が募り、消極的になっていたのだと推測される。口腔内のネバネバとした気持ち悪い感覚があると、口臭があ るのではないかという不安に結びつけていたのであろう。心理テストや生活調査票を記入することは患者にとって負担であるが、口臭に悩んでいる患者には各種 心理テストの数値化とVASをグラフ化することにより、自身がおかれている状況を把握することができ、治療が進むにつれ不安解消されていることが認識でき ると考えている。口臭外来を探し当て、希望を抱いて受診し、臭気、感覚、不安すべてが改善したという一連の結果が安心感へと繋がったと推測される。

 

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