虫歯で生じた穴にレジン充填をして復元する際、重要なのが歯の色も元のように再現することです。充填した部分と周囲の健全歯質との色合いに違いがあると、目立ってしまうからです。充填用のレジン剤には何種類もの色が取り揃えられ、この中から最も歯の色に近いレジンを選択して充填するのですが、それほど単純な作業ではありません。
歯の色は単調な白色ではなく、黄色やオレンジ色、茶色、青色などが混じり合った複雑な色彩を持っています。歯先(切端)の部分と歯肉に近い(歯頚部)部分では色が異なるだけでなく、半透明か否かという相違点もあります。表面と深部でそれぞれ異なった色が重なり合い、複雑な形状から歯の色ができているのです。透明度についても、歯の中心部と切端部ではかなりの差があります。
このように歯の色はさまざまな要因から決定されるため、単純に特定の色のレジンを選んで充填しても元の色にはなりません。歯の色を忠実に復元するためには、歯の部位ごとにレジンを選んで使い分けるだけでなく、表面のエナメル質と内部の象牙質の部分で透明度の異なるレジンを重ねて使う必要もあります。この方法を「積層充填」といい、自然な歯の色を再現するためには必要不可欠なテクニックです。当クリニックでは、希望した方に対して保険適応外の積層充填用剤を用いたレジン充填を行っています。