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チーズでむし歯予防!?

唾液pHと緩衝能力

キーワードを入れ替えながらあれこれ検索していくと、ある論文に出会いました。驚愕の内容です。オレンジジュース摂取後、唾液pHはプラーク中pHと同様に低下するが、数十秒で上昇して1分ほどで元の中性の状態に戻ったという実験結果が示されていたのです。プラーク中では数十分かかることが、唾液中では秒単位で進行するというわけです。こんなに急速な変化は、当院で行う唾液検査では促え切れません。測定に時間がかかるため、短時間の変化を感知できないのです。

ここで、当院の唾液検査を説明しておきましょう。唾液検査で測定する項目は安静時分泌量、刺激時分泌量、安静時pH、刺激時pH、緩衝能力、白濁度、黄濁度、沈殿度、沈殿度、沈殿率、官能検査の計11項目です。安静時唾液とは自然に出てくる唾液を指し、3分間出てきた唾液を溜めて量やpHを測定します。刺激時唾液とはものを噛んだ時に出てくる唾液のことで、5分間テスト用のガムを噛み、出てきた唾液を溜めておいて調べます。

唾液pHの測定には、チェックバフという唾液専用のpHメーターを使います。細長いチェックバフの一端に計測用の受け皿があり、そこにスポイトで採取した唾液を滴下するとすぐにpHが数値で表示される仕組みです。

 
緩衝能力とは唾液の重要な働きのひとつで、酸性やアルカリ性のものを中性に変える能力をいいます。この緩衝能力を測るために唾液に試験薬を加えますが、これは単なる乳酸溶液です。乳酸液は酸性ですが、唾液の力で中性に近付くため乳酸酸を中性にする能力の強度を見ることにより、緩衝能力をはかることができるのです。実際には、唾液に試験薬を混ぜて5分経った時点で、pHをチェックバフで測定します。

チーズの実験では、唾液のpHや緩衝能力を測ることでチーズの力を説明できるだろうと甘く考えていましたが、5分間チーズを噛んだ後に唾液の緩衝能力を調べていくと、pHがみるみる変わってしまい、変化が捉えられなくなります。もっと短い間隔、例えば10秒毎に唾液を集めてその推移を調べる必要がありますが、そんなことは不可能です。たった10秒間では、計測に使えるほどの唾液が集まらないからです。