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動機づけ面接

患者さんの来院理由の把握

舌が痛いと訴える患者さんが来院された際、まず私はその舌の痛みを和らげること、そして可能であれば痛みをなくすことを考えますが、それが患者さんの望みであるとは限りません。

舌の痛みにより来院される患者さんの中には、「舌がんではないのか」と強い心配を募らせて来られる方が少なくありません。診察の結果、「がんは見当たりません」「この痛みは薬の治療でよくなる可能性があるので薬を出しましょう」というと、「舌がんでないと知りホッとしました。薬を飲んで治したいとは思いません」ということで解決してしまうこともあるのです。

舌を注意して調べていると、「舌の痛みは最近入れたかぶせ物が舌を刺激しているからで、歯の方を診て欲しい」といわれることもあります。実際にかぶせ物に問題があって、歯を治せば舌が治る場合もあります。

このように患者さんの望みを治療者である私が先走って推測し、治療法を一方的に決めつけることは間違いの元となります。舌の痛みは詳しく話を聞けばすぐ間違いに気が付きますが、患者さんご自身が本当はどうしたいのかをわかっていない場合もあります。そのような場合には「動機付け面接」という方法を用いることができます。

動機付け面接とは

治療者が患者さんの来院目的を把握するために「動機づけ面接」を行うわけではなく、患者さんが抱えている問題を解決するため、考え方や行動を変える必要がある場合に役立つ方法です。

患者さんは自ら何らかの変化が必要であると薄々感じていたとしても、外からもたらされた考え方や行動を簡単に変えることはできません。変化の必要性をはっきり自覚するためには治療者の手助けが必要です。動機付け面接では患者さんご自身が具体的な目標を決めて気持ちを固め、行動を起こす主役となります。治療者は患者さんに寄り添って援助するサポート役なのです。

四つの基本的な技能

動機付け面接において、治療者が患者さんに問いかける具体的な方法です。

開かれた質問 Ask Open-ended questions

「好きですか、嫌いですか」といった質問は「はい」か「いいえ」で会話が途切れてしまいます。「どんな気持ちですか」というように「どんな」「なぜ」など疑問点を具体的に引き出す聞き方をすることにより、患者さんが自分の言葉で詳しく話してくれるようになります。

是認 Make Affirmations

「それはよい考えですね」「よく話してくれましたね」というように患者さんの考えを認め、賛同することで患者さんの自信が高まり、よい治療関係を築くことができます。

聞き返し Use Reflections

患者さんが話した言葉を聞き返したり、気持ちを確かめたりすることも大切です。単純に聞き返すだけでなく、そこに含まれる意味や感情まで聞き返すことで主張をより明瞭に引き出すことが可能となります。

要約 Use Summarising

患者さんの話の中で役立ちそうな部分を組み立ててまとめることにより、話の中の矛盾点を浮き彫りにすることができ、要約することで話の内容をより煮詰まった実り多きものにすることができます。

チェンジトーク

動機付け面接では、患者さんご自身がやる気を出せるような発言を引き出すことが重要です。このような発言をチェンジトークといい、次のような段階を踏んで明らかにしていきます。

このままでいることの不都合 Disadvantages of the status quo

現在抱えている問題点に注目し、現状のままではどんな悪い点があるのかを具体的に話す。

変化することによる利点 Advantages of change

変化することでどのようによい結果が得られるかについて話す。

変化できる能力 Optimism for change

過去の成功体験や持ち合わせている能力を評価し、これからの見通しについて話す。

変化への意思 Intention to change

変わりたいという意思や具体的な行動について話す。

四つの原則

動機付け面接を進めるに当たり、次に挙げる四つの原則を守るようにします。

共感 Express empathy

患者さんの認識や考えや気持ちを理解したうえ、言葉で聞き返し、具体的な気持ちを表現します。

矛盾を拡大する Develop discrepancy

患者さんの現在の状況と「変化したい」という方向とにどのような矛盾があるのかをわかりやすく示します。その点を認識することにより、患者さんの気持ちを強化し、具体策を練りやすくなります。

抵抗を手玉に取る Roll with resistance

患者さんが取り組む方法がうまくいかない場合は、それを否定するのではなく、抵抗を交わしながら改善すべき方向へ変化できるように手助けします。

自己肯定感が高まるように支援する Support self efficacy

患者さんが自分自身を認め、自信を持ってスムースに変わっていけるように支援します。

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